このままでは飛ばされる? [仕事]
「今度から書類は手渡ししますから」
僕の取引先である元請け企業の50代の担当者が、ある会議の際に言った言葉です。
その会議に参加していたそれぞれの下請け会社の担当者たちは、一瞬訳が分からず言葉を失ってしまいました。
その書類というのは、1ヶ月に2度行われる定例会議で使うメインの資料なんです。
会議ではいつもその資料を元に、約2週間の工程や流れを確認していました。
平日の18時からの会議なので、仕事の都合で時間に間に合わなかったり、あるいは参加しなくても特に困らない業種の方もいるので、協力業者全体の10~20%が大体いつも参加していました。
僕も一応義務的に参加していました。
その会議で使う資料は今までは、前日もしくは当日に電子メールで、全協力業者に送られていました。
僕たちは前もってそれを印刷して、自社の予定や工程を決め、念の為に会議に参加して再確認するという、今まではそんな流れだったのです。
更に僕の場合は、その資料をクラウドサービスで共有し、社員が出先でもスマホなどで確認できるようにしていました。
もちろん僕自身も紙ベースの文書を持ち歩かなくていいので、そのほうが楽でしたし。
ところが今まで電子化してくれていたその書類を、紙に印刷して渡すから、今度から取りに来て下さい、というのです。
このことにはさすがの僕も理解に苦しみました。
今までいろんな方々と仕事でお付き合いしてきて、
ITスキルのない方や、
電話魔だったり、
忘れっぽい人など、
こちらを困らせてくれた方は沢山いますが、このパターンは初めてでした。
その元請け会社の50代の担当者は、決してITスキルがないという訳ではありません。
たぶん、得意ではないでしょうけど。
たとえばJW CADで図面を書いたり、メールも普通にできるし、社内で電子化された情報やデータにも普通にアクセスできる方です。
この方は以前、とあるメーカーに勤めていたのですが、そこは日本でも名のしれた企業の資本金が入った子会社でした。
その当時は、お互い協力業者同士として、現場で顔を合わせていました。
仕事の内容によっては直接的に関わることもあったため、どちらかというと僕は仲良く接していました。
そんな彼が、その会社を辞め、当時の取引先であった元請け側の企業に再就職したのです。
その元請け企業は現在とても勢いがあり、次々と市場を拡大しています。
そこでは新人の育成と、「即戦力」として活躍できる経験を持った人を、募集していたんです。
ある意味で彼は適任だったのかもしれません。
ところが、僕達は知っていました。
僕達というのは、その協力業者たちのことです。
僕たちは彼が
「ミスの多い人間」
だということを、昔からよく知っていました。
ただ、下請会社同士は直接的に取引しているわけではないので、金銭的な被害はあまりなかったのです。
でも彼のいた会社はかなりの損害を被っていたと思います。
保険が適用になったケースもあったと思いますが、僕が知るかぎりでも数百万の損害を与えていました。
その原因は単純に、
「彼のミス」でです。
僕たちは彼がよくミスをすることを知っていたので、彼が元請け側の企業に入った時には、正直驚きました。
「またやるぞ、きっと」
みんなが口を揃えてそう言っていたのを覚えています。
ところが彼自身は、割りと楽観的な性格で、失敗を水に流すのが得意な人だったのです。
彼がよく言っていたのは・・
「またやっちゃったな、俺」
「ごめん、ホントにごめん」
「今度から気をつけます」
「やっぱり俺だからさ、すぐ忘れちゃうんだよね」
そう、何回も同じような話を聞きました。
そしてまたミスをするんですよね。
当時勤めていた会社で彼は結構大きな損害を出した後転勤になり(事実上の左遷)、その後その会社を退職して、元請け側の企業に再就職することが出来たわけです。
再就職の際は、以前より交流の深かった元請け企業の社員が、口利きをしてくれたと聞いています。
そんな彼が元請け側になったことで、実際に様々なトラブルが発生しました。
具体的には書きませんが、以前と全く変わらず、ただ忘れていたとか間違ったとか覚えていないとか。
そして僕たちは
「やっぱりね、思った通りだ」
と、半ば諦めムードで彼と接しているわけです。
もともとミスが多かった人間が、立場が変わったからといって簡単に直るものではないんですよね。
それに彼はもう50代半ば。
すっかり育ち切っています。
彼の言動や態度を見ていると、自分を変えようとしていないのは明白です。
そして誰も彼を指導することができないのです、その企業の中では。
内情を見てみると、ほとんどが若い社員で構成されていて、若い新人の育成に忙しいのです。
だから彼自身が自分で気付き、自分を変えなければならないのかもしれません。
そんな彼が今回、なぜ書類をメールではなく直接手渡ししようとしたのか?
それにはこんな理由がありました。
どうやら彼の悩みは、
「自分に情報が集まってこない」
ということのようでした。
どういうことかと言うと・・・
僕達下請会社は、彼の言うことがあまり信用出来ないので、横つながりで連絡を取り合ったりして、円滑に現場を進めていたわけです。
彼の管理方法や能力では現場が上手く行かないので、そのままではこちらが被害を被ってしまうからです。
最初の予定がしっかりとしていれば、特に彼が話に入ってこなくても順調に物事は進むのです。
仕様や工程の変更があった時は速やかに連絡をくれれば、こちらとしては上手く行っていたのです。
それでもトラブルは多かったですね。
どうやら彼はそれが気に入らなかったようでした。
そんな彼が突然、会議に参加しないと文書を渡さない!という暴挙に出たわけです。
もし会議に参加できなければ、その後にでも会社に書類を取りに来て下さい!そう言うのです。
これには流石にみんなも固まってしまいましたよ。
まさか、そう来るとは夢にも思っていませんでしたね。
会議に参加すれば、必然的に彼と打ち合わせすることになりますから、彼自身が全体像を把握しやすくなると考えたのだと思います。
また会議には協力業者全体の10~20%しか参加していないので、出席率を上げたいという狙いもあったのでしょう。
ただ、僕たちはあくまでも勝手に動いているのではなく、工程に沿って動いていたのですから、その工程がしっかりと組んであれば、全く問題はなかったはずです。
要するに、自分の管理能力のなさを棚に上げて、しかも自分の立場を利用して、何かしら優位な展開に持ち込もうと考えたのだと思います。
そしてそれを感じた僕たちは、反論することさえ出来ませんでした。
理解できなかったからです。
ITを活用した仕事の効率化が叫ばれているこの時代に、一昔前の方法に戻すと彼は言っているのです。
パソコンを持っていなかった個人経営の社長さんだって、元請けからのメールを受けるためだけにパソコンを導入しました。
おそらく会社にそのことが伝われば、彼も追求されると思いますよ、この件は。
なぜそんな非効率なことをするんだ?と。
僕達協力業者の負担を増やして、自らの求心力を高めようなんて、そんなこと上手くいくはずがありません。
実は、この会議にはもう一人、元請け側の別の担当者が出席しています。
ちょっと大人しい方なんですが、彼のITスキルは結構高いです。
そしてその方は、彼の方針には従わず、今までどおり電子メールで書類を送ってくれます。
その方も50代前半なのですが、彼の上司に当たるし、できればその変なやり方を食い止めて欲しいところです。
そして例の彼は、この件に関しては執着しているようで、求心力はますます低下しているのに、全く気付いておらず、改善の兆しも見えません。
ちなみにこの取引先は僕自身が担当しているのですが、このまま良くならなかったり、これ以上ミスが増えてこちらの負担が増すなら、彼の担当する物件に関しては取引を中止したいとさえ考えています。
僕はその企業の社長や取締役員たちと、昔から仲良くさせてもらっていたので、事情を説明して抜けることは可能だと思います。
その前に彼が飛ばされてしまうかもしれませんが。
今回はそんな、あまり役に立たない内容のお話でした
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僕の取引先である元請け企業の50代の担当者が、ある会議の際に言った言葉です。
その会議に参加していたそれぞれの下請け会社の担当者たちは、一瞬訳が分からず言葉を失ってしまいました。
その書類というのは、1ヶ月に2度行われる定例会議で使うメインの資料なんです。
会議ではいつもその資料を元に、約2週間の工程や流れを確認していました。
平日の18時からの会議なので、仕事の都合で時間に間に合わなかったり、あるいは参加しなくても特に困らない業種の方もいるので、協力業者全体の10~20%が大体いつも参加していました。
僕も一応義務的に参加していました。
その会議で使う資料は今までは、前日もしくは当日に電子メールで、全協力業者に送られていました。
僕たちは前もってそれを印刷して、自社の予定や工程を決め、念の為に会議に参加して再確認するという、今まではそんな流れだったのです。
更に僕の場合は、その資料をクラウドサービスで共有し、社員が出先でもスマホなどで確認できるようにしていました。
もちろん僕自身も紙ベースの文書を持ち歩かなくていいので、そのほうが楽でしたし。
ところが今まで電子化してくれていたその書類を、紙に印刷して渡すから、今度から取りに来て下さい、というのです。
このことにはさすがの僕も理解に苦しみました。
今までいろんな方々と仕事でお付き合いしてきて、
ITスキルのない方や、
電話魔だったり、
忘れっぽい人など、
こちらを困らせてくれた方は沢山いますが、このパターンは初めてでした。
その元請け会社の50代の担当者は、決してITスキルがないという訳ではありません。
たぶん、得意ではないでしょうけど。
たとえばJW CADで図面を書いたり、メールも普通にできるし、社内で電子化された情報やデータにも普通にアクセスできる方です。
この方は以前、とあるメーカーに勤めていたのですが、そこは日本でも名のしれた企業の資本金が入った子会社でした。
その当時は、お互い協力業者同士として、現場で顔を合わせていました。
仕事の内容によっては直接的に関わることもあったため、どちらかというと僕は仲良く接していました。
そんな彼が、その会社を辞め、当時の取引先であった元請け側の企業に再就職したのです。
その元請け企業は現在とても勢いがあり、次々と市場を拡大しています。
そこでは新人の育成と、「即戦力」として活躍できる経験を持った人を、募集していたんです。
ある意味で彼は適任だったのかもしれません。
ところが、僕達は知っていました。
僕達というのは、その協力業者たちのことです。
僕たちは彼が
「ミスの多い人間」
だということを、昔からよく知っていました。
ただ、下請会社同士は直接的に取引しているわけではないので、金銭的な被害はあまりなかったのです。
でも彼のいた会社はかなりの損害を被っていたと思います。
保険が適用になったケースもあったと思いますが、僕が知るかぎりでも数百万の損害を与えていました。
その原因は単純に、
「彼のミス」でです。
僕たちは彼がよくミスをすることを知っていたので、彼が元請け側の企業に入った時には、正直驚きました。
「またやるぞ、きっと」
みんなが口を揃えてそう言っていたのを覚えています。
ところが彼自身は、割りと楽観的な性格で、失敗を水に流すのが得意な人だったのです。
彼がよく言っていたのは・・
「またやっちゃったな、俺」
「ごめん、ホントにごめん」
「今度から気をつけます」
「やっぱり俺だからさ、すぐ忘れちゃうんだよね」
そう、何回も同じような話を聞きました。
そしてまたミスをするんですよね。
当時勤めていた会社で彼は結構大きな損害を出した後転勤になり(事実上の左遷)、その後その会社を退職して、元請け側の企業に再就職することが出来たわけです。
再就職の際は、以前より交流の深かった元請け企業の社員が、口利きをしてくれたと聞いています。
そんな彼が元請け側になったことで、実際に様々なトラブルが発生しました。
具体的には書きませんが、以前と全く変わらず、ただ忘れていたとか間違ったとか覚えていないとか。
そして僕たちは
「やっぱりね、思った通りだ」
と、半ば諦めムードで彼と接しているわけです。
もともとミスが多かった人間が、立場が変わったからといって簡単に直るものではないんですよね。
それに彼はもう50代半ば。
すっかり育ち切っています。
彼の言動や態度を見ていると、自分を変えようとしていないのは明白です。
そして誰も彼を指導することができないのです、その企業の中では。
内情を見てみると、ほとんどが若い社員で構成されていて、若い新人の育成に忙しいのです。
だから彼自身が自分で気付き、自分を変えなければならないのかもしれません。
そんな彼が今回、なぜ書類をメールではなく直接手渡ししようとしたのか?
それにはこんな理由がありました。
どうやら彼の悩みは、
「自分に情報が集まってこない」
ということのようでした。
どういうことかと言うと・・・
僕達下請会社は、彼の言うことがあまり信用出来ないので、横つながりで連絡を取り合ったりして、円滑に現場を進めていたわけです。
彼の管理方法や能力では現場が上手く行かないので、そのままではこちらが被害を被ってしまうからです。
最初の予定がしっかりとしていれば、特に彼が話に入ってこなくても順調に物事は進むのです。
仕様や工程の変更があった時は速やかに連絡をくれれば、こちらとしては上手く行っていたのです。
それでもトラブルは多かったですね。
どうやら彼はそれが気に入らなかったようでした。
そんな彼が突然、会議に参加しないと文書を渡さない!という暴挙に出たわけです。
もし会議に参加できなければ、その後にでも会社に書類を取りに来て下さい!そう言うのです。
これには流石にみんなも固まってしまいましたよ。
まさか、そう来るとは夢にも思っていませんでしたね。
会議に参加すれば、必然的に彼と打ち合わせすることになりますから、彼自身が全体像を把握しやすくなると考えたのだと思います。
また会議には協力業者全体の10~20%しか参加していないので、出席率を上げたいという狙いもあったのでしょう。
ただ、僕たちはあくまでも勝手に動いているのではなく、工程に沿って動いていたのですから、その工程がしっかりと組んであれば、全く問題はなかったはずです。
要するに、自分の管理能力のなさを棚に上げて、しかも自分の立場を利用して、何かしら優位な展開に持ち込もうと考えたのだと思います。
そしてそれを感じた僕たちは、反論することさえ出来ませんでした。
理解できなかったからです。
ITを活用した仕事の効率化が叫ばれているこの時代に、一昔前の方法に戻すと彼は言っているのです。
パソコンを持っていなかった個人経営の社長さんだって、元請けからのメールを受けるためだけにパソコンを導入しました。
おそらく会社にそのことが伝われば、彼も追求されると思いますよ、この件は。
なぜそんな非効率なことをするんだ?と。
僕達協力業者の負担を増やして、自らの求心力を高めようなんて、そんなこと上手くいくはずがありません。
実は、この会議にはもう一人、元請け側の別の担当者が出席しています。
ちょっと大人しい方なんですが、彼のITスキルは結構高いです。
そしてその方は、彼の方針には従わず、今までどおり電子メールで書類を送ってくれます。
その方も50代前半なのですが、彼の上司に当たるし、できればその変なやり方を食い止めて欲しいところです。
そして例の彼は、この件に関しては執着しているようで、求心力はますます低下しているのに、全く気付いておらず、改善の兆しも見えません。
ちなみにこの取引先は僕自身が担当しているのですが、このまま良くならなかったり、これ以上ミスが増えてこちらの負担が増すなら、彼の担当する物件に関しては取引を中止したいとさえ考えています。
僕はその企業の社長や取締役員たちと、昔から仲良くさせてもらっていたので、事情を説明して抜けることは可能だと思います。
その前に彼が飛ばされてしまうかもしれませんが。
今回はそんな、あまり役に立たない内容のお話でした
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2016-02-22 16:29
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